2012年 原発・エネルギーをめぐる熱い夏 今後の日本の行方を決める一つの試金石かな(SNSにとってもね)

6月の最終週の昨日、原発やエネルギー・環境をめぐるニュースがてんこ盛りだった。夏が本格化する7月に向け、今年の夏の対策や今後の日本のエネルギー・環境政策にかかわる大きな話題があった。2012年夏の原発・エネルギー・環境は、今後の日本の行方を決める試金石かなとも思うので、簡単にメモ。

ニュースの整理をすると、、

原発依存度3案決まる 政府、今夏に絞り込み
http://www.asahi.com/politics/update/0630/TKY201206290794.html

政府は29日、関係閣僚によるエネルギー・環境会議を開き、2030年の電力をどうするかを定めるため、三つの選択肢を決めた。30年の原発の割合を「0%」「15%」「20〜25%」の三つにして、それぞれ使用済み燃料をどう扱うか、温室効果ガスの排出量はどうなるかを示した。国民から幅広い意見を聞いたうえで、8月末に今後のエネルギー政策を定める。

政府は2030年までの原発依存度の割合を3シナリオ描き、国民の意見を聞いて8月末までに今後の原発方針を決めると。

原発危険度ランキング、敦賀1号機「最も危険」
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120628-OYT1T01269.htm

与野党議員が超党派で作る「原発ゼロの会」は28日、全国50基の原子力発電所について、すぐ廃炉にすべき原発24基と残り26基について、それぞれの危険度ランキングを発表した。
廃炉の24基では日本原子力発電敦賀原発1号機(福井県敦賀市)を、また26基では関西電力大飯原発1、2号機(同県おおい町)を最も危険と判定した。再稼働が決まった大飯3、4号機は12位だった。

即時廃炉の24基は、東日本大震災中越沖地震などで被災した原発、停止要請の浜岡の他、敦賀1(日本原電)、美浜2(関電)など。
危険度ランキング上位は、大飯1(関西電力)、大飯2(関西電力)、美浜1(関西電力)、美浜3(関西電力)、島根1(中国電力)、高浜1(関西電力)、島根2(中国電力)、高浜2(関西電力)、志賀1(北陸電力)、高浜3(関西電力)、高浜4(関西電力)など関電をはじめ、中国、北陸などに集中。
このような原発に関する情報提供が重要になると。

ソースは、これ。
http://saito-san.sakura.ne.jp/sblo_files/genpatsuzero/image/E291A0E7B78FE59088E383A9E383B3E382ADE383B3E382B0.pdf
ちなみに原発ゼロの会のメンバーは、民主党 近藤 昭一、逢坂 誠二、 自民党 河野 太郎、長谷川 岳、 公明党 加藤 修一、 みんなの党 山内 康一、日本共産党 笠井 亮 社民党 阿部 知子、新党きづな 斎藤 やすのり(敬称略)の9名。

大飯再稼働に関して、、
■【大飯原発「再稼働反対」 市民ら官邸囲む】参加者20万人と主催者側 警視庁は2万人弱 野田首相「大きな音だね」
http://www.47news.jp/47topics/e/231172.php

関西電力大飯原発3号機(福井県おおい町)の原子炉起動を7月1日に控え、原発再稼働に反対する市民による抗議行動が29日夕、首相官邸周辺で繰り広げられた。「再稼働反対、再稼働反対」。地中から湧き上がるような声が官邸を包んだ。
 抗議行動は、脱原発グループを中心に、短文投稿サイトのツイッターフェイスブックなどを通じた呼び掛けで市民らが集結。毎週金曜日夕にあり、再稼働が政治課題に上り始めた6月は回を重ねるごとに増え、この日主催者側は20万人と発表、 警視庁は2万人弱としている。

デモは拡大。ツイッターフェイスブックの呼び掛けが効いていると。

関西広域連合、10%節電了承へ 大飯再稼働で

関西広域連合は29日、関西電力大飯原発3号機(福井県)の再稼働に伴い2010年夏比の節電目標を15%から10%に見直す政府方針を了承する方針を固めた。複数の関係者が明らかにした。30日の同連合会合で正式に決める予定だ。

おヤクザさん、、じゃない関西の2府5県の行政機構である関西広域連合は、7月1日の前にバタバタと10%節電を決めた。今後政府が目標を下げれば、それに合わせて節電目標を緩和する方針だと。

エネルギー・環境に関する3つの選択肢、検討経緯と今後の決定プロセス

■ざっくりとした検討経緯
エネルギー基本計画は、当然国にとって重要な計画。2010年のエネルギー基本計画では、地球温暖化問題の解決、安価、エネルギー安全保障上も優れる、という理由で原発の比率を2030年までに5割まで拡大するというエネルギー選択だった。

ただし昨年の3.11があり、当時の菅首相脱原発!と吠え、政府が6月に国家戦略担当大臣をはじめ関係閣僚をメンバーとするエネルギー・環境会議を設置し、7月29日に原発依存度を低減するという基本理念を決定。その後、経産省はじめ、いろいろな省庁が検討を具体的に進めた。
本丸の経産省 総合資源エネルギー調査会基本問題委員会では、検討開始の前から委員会メンバーを巡っていろいろあったのはまだ記憶に新しい。経産省役人が作った委員会メンバーリストは原発推進派が多数だったため、当時の鉢呂経産大臣がダメ出ししたら、その翌日から「放射能つけちゃうぞ」発言とかでバッシングに遭って結局辞任してしまった。陰謀論めいた話も当初からあったが、まあ、よくわからない。

その後、枝野大臣のもと委員会メンバーが決まり検討が開始されたものの、ぐちゃぐちゃな議論が多かったように思う。この辺は、ビデオジャーナリストの神保氏が主宰するビデオニュースドットコムがgood job!で、委員会をよくフォローしていた。
http://www.videonews.com/

その検討プロセスでは、エネルギー・環境に関する選択肢で「原発依存35%」という案もあったが、それはさすがに潰れ、昨日の3つの選択肢になったと。

■3つの選択肢 原発依存 0% 15% 20−25%
その3つのエネルギー・環境に関する選択肢は、原発依存度でいうと、2030年時点で0% 15% 20−25%。

エネルギー選択シナリオは、これ
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120629/shiryo1.pdf

簡略化したもの(先に挙げた朝日新聞記事)は、こんな整理 

このうち、核燃料処理に関しては、原案をつくった原子力委員会が電気事業者など原発推進派だけを集めた勉強会で報告書内容を調整していた疑いが発覚したりして、実質先送りになっている。原発を含むエネルギーミックスは、CO2削減、電気料金、GDPへの影響などの観点から見たらという朝日新聞のアドバイスが上の表。

原発15%モデルは、今ある原子炉を40年で廃棄するルールを適用したら2030年時点で原発依存は15%位になるというもので、がんばって原発を積極的に減らそうというものではない。で、2050年時点でも原発は少し残ると。

逆に20−25%モデルは、原発を新設するか、本来なら廃棄すべき原発を無理して稼働させておくということが前提ということだ。2010年時点の原発依存度が26%程度だったから、ちょびっと依存度下げましょうと。

2030年で0%モデルは、0%というと過激のように思えるが、「原発ゼロの会」がすぐに廃炉にすべきという原発を早めに閉め、あとは40年廃棄ルールを適用したら、ほぼ実現するイメージ。今、再稼働でデモが起こっている大飯原発3号機などは、結構ずっと稼働している感じ。
逆に、即時原発0というシナリオはなくなったと。

この辺は、「原発ゼロの会」の資料が参考になる(↓の8Pとか)。
http://saito-san.sakura.ne.jp/sblo_files/genpatsuzero/image/E694BFE7AD96E68F90E8A880E9AAA8E5AD90.pdf

■今後の決定プロセス
エネルギー・環境会議では、”3つのシナリオをもとに国民同士の対話が進むようプロセスを踏みながら、責任ある選択を8月を目途に行い、政策を具体化する”とのこと。
その今後のプロセスとは、
2012年7月:国民的議論を進める
2012年8月:革新的エネルギー・環境戦略を決定する
その後、速やかにエネルギー基本計画をつくる、年内に原子力政策大綱や地球温暖化対策、グリーン政策大綱をまとめる

おお、スピーディ! 野田さん いいね!(いや、まあ得意の「待った無し!」作戦を展開するのかな、、、)

今年の夏こそ、日本のSNSの出番かな

僕自身は、今夏の大飯原発の再稼働は賛成だし、その再稼働反対のデモについては、(デモ好きだが)冷ややかな態度。大飯原発再稼働プロセスで言えば、ここ1年の関西電力の取組は本当に最悪だった、「待った無し!」議論展開はいまいちだ、ということは前に書いたとおり。

大飯原発、7月再稼働 首相が最終判断
http://d.hatena.ne.jp/morissk/20120616/1339824342

大飯原発再稼働に関連して デモあり、計画停電発表あり、では展望は?
http://d.hatena.ne.jp/morissk/20120622/1340378707

今回のエネルギー・環境に関する3つの選択肢については、「この3つの選択肢から自分の選択肢を考える」「今後の検討プロセス・タイミングは尊重する」という立場。(少なくとも2009年選挙で民主党に投票した反省を踏まえてだが、、、(泣)。)

長くなるので別に改めて書くとして、「3つの選択肢」で言えば、僕はまあ原発依存度0%、それも2030年よりも数段前倒しでという意見。その方法は、関西広域連合が日和つつある節電や電力事業構造改革が主。
そして、いろいろな人が、いろいろな意見があると思うが、「3つの選択肢」からの議論をスピーディに行うべきということから、即時原発停止、25%以上の原発依存という選択肢は無しという意見。

7月の「国民的議論」として、政府は
1)エネルギー・環境の選択肢に関する情報提供データベースの整備
2)エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会
3)エネルギー・環境戦略に関するパブリックコメントの募集
4)エネルギー・環境戦略の選択肢に関する討論型世論調査
とか挙げている。去年もいろいろあった「やらせ」意見集約も復活するかもしれないが。

このスピーディな「国民的議論」こそ、ツイッターフェイスブック、ブログなどSNSが役に立つ時と思う。短期間で、ありきたりの議論をして、例えば「じゃあ、真ん中の15%ということで、、」とかなったら、今までの日本のまんま。それを変える手段は、現在はSNSくらいしかないし、そのSNSに先に挙げた「原発ゼロの会」とか、いろいろな組織・人が情報提供していって、少しは深い議論が始まるとなれば、今後の希望も少しは出てくる。
原発再稼働反対デモの動員にSNSが機能したことを指して日本の「アジサイ革命」という人がいるけど、SNSにとっても本当の勝負は7月からだろう。

今年の夏は、エネルギー・環境という重要な政策にとっても熱いし、今後のSNSということでも一つの試金石と感じる。