千葉市長インタビュー  トップこそコミュニケーション能力が重要だなあ

千葉市長のインタビュー記事がおもしろく、メモ。
地方行政自治はトホホが多いが、しがらみがなく、若い実行力がある市長が動くと、変わる可能性=希望 が感じられる。
今、若手に対してコミュニケーション云々という話が多いが、トップこそコミュニケーション能力を発揮した施策展開が重要だということを思う。

JBPRESS
橋下徹大阪市長よりすごいぞ、熊谷俊人市長果敢なコストカットに挑戦、千葉市を国際都市に」
     http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35637

千葉市って、どんなとこ、、
千葉市は、良く知られるように、東京都心と成田空港のほぼ中間に位置し、1992年に日本で12番目の政令指定都市となった。少子高齢化の流れの中でも、人口は年々増加しており、約96万人、世帯数は約41万世帯、全国平均と比べ、若い人口構成を持つ。

財政力は、政令市の中でも上位(財政力指数政令市中第6位)にはあるが、このままだと将来、実質公債費比率が早期健全化基準の25%を超える可能性があるため、平成22年3月に「千葉市財政健全化プラン」を打ち出した。
それにより、平成22年度では、人件費の削減をはじめとする財政健全化に向けた様々な取組みを行った結果、プラン策定時(平成22年3月)に見込まれていた270億円の収支不足を解消し、形式収支は10億円のプラスとなるなど効果が出た。
まずは、財政規律を確保した自治体と評価できる。
ちなみに一般会計予算(平成23年度)は、3,582億円。

街づくりの都市経営では、千葉都心の整備、幕張新都心の整備、蘇我副都心の育成・整備を挙げ、企業立地やベンチャー育成に注力しているようだ。

   この辺は、千葉市IRより http://www.city.chiba.jp/zaiseikyoku/zaisei/shikin/download/231111tosikeiei.pdf

まあ、首都圏の恩恵を受けながらも、財政再建に歩みだし、東京に巻き込まれないための都市政策をいろいろ打っていると。


■市長の熊谷さんは、、
2009年からの千葉市長は、熊谷俊人さん。33歳と若い。
前任の鶴岡啓一氏が収賄の容疑で逮捕された時の選挙で市長になった人。

平成21年9月「市長マニフェスト」には、「市政の透明性を向上する」「大規模開発の見直し、行政の効率化による財政再建」「市民の命と幸せを大事にする千葉市を創る」「未来への投資で全国に誇れる県都千葉市へ」とある。

既存事業の徹底した整理・合理化(財政再建)とともに、将来への投資として医療、子育て、教育、介護、絆社会の再生などを重点的に推進する方針のようだ。

千葉市長インタビュー(JBPRESSより)

以下、上記のインタビュー記事で、感心したところをメモ。

財政再建に関連して、、
そもそもの財政悪化要因やコスト削減ができた理由では、、

歴代の市長は元助役だったり、中央官庁出身だったりという役所内部の方ばかりでした。でも役人ってどうしても選挙に弱いんですよ。となると勝つためには各政党、各団体の支援が必要で、そのためには補助を増やす必要があります。

 他の市のことも研究しましたが、財政が傷むのはだいたい選挙に弱い首長の在任中です。逆に選挙に強い人がトップにいる間は、ロジック上正しいことができる。

うむ。選挙に弱い市長は、各政党や団体のしがらみで財政規律が緩むと。

行政に来て思ったのは、普段付き合っている団体が古いところばかりだということです。経済で言えば商工会議所とか青年会議所とか。もちろん地元でずっと頑張ってきてくれた人たちだから大事なんです。

 けれど、そういうお付き合いからは新しいビジネスのアイデアは生まれません。守ることに集中している人たちですから、聞こえてくる声は補助金を出してくれとか、地元に仕事を回せとか。

まあ、地元の古いおじいちゃん達に囲まれると、おねだりが多くて、新しいことは出てこないと。


で、実際の予算カットは、、

平成22年度の予算から、ほとんどの事業をバッサリ切って、かなりスリムになりました。高齢者系を中心に福祉にもメスを入れましたし。
カットしたのは、例えば敬老会をやるために70歳以上全員に830円出して、1億円使うといったことです。もしくは銭湯の無料券や鍼灸マッサージの割引券を、毎年配るとか。
高齢者支援ってそういうことじゃないでしょという部分を、ババッと切りました。
・・・略
さらに人件費も削減して、36億円を捻出しました。(略) 組合と一生懸命交渉して、最大9%カットしました。
なにしろ我々は、政令指定都市で初めて退職金をカットしています。これも最大3%ですから説得するのは大変でしたけれど、話せば分かる。

うむ。高齢者福祉も、聖域などせず、無駄は潰すと。人件費削減だって、組合と「話せばわかる」。
コミュニケーション力ある市長 いいね!


■新たな事業・施策について、、
外部人材の活用では、、

行政は積み上げですから、・・・待ちの姿勢になってしまう。うまくいっているうちはいいんでしょうが、もう変わらなきゃダメな部分は外部の人材を入れないといけません。
 ・・・まずは民間の人もなじみやすい経済分野を突破口にして、民間と行政の人材を融合させる。外部の発想を採り入れることで、行政の人がさらに能力を高められるということもあるはずです。
・・・集客観光的な部門とか、民間の方が活躍できるところからいい刺激になるような人を入れていく。・・・

実際に、千葉都市モノレール、市立病院とかに外部の経営人材を取り入れ、刺激を与えているようだ。

新しいビジネス・政策づくりのヒントは、、

私が市長になってから、幕張新都心にいるようなイケイケドンドン企業を歴訪した・・・(略)。
彼らは特に困ってませんから、自分から行政とコンタクトを取らない。だからずいぶん税金を納めてくれているのに、接点がなかったんです。

 で、彼らとあれこれ話をするといろんなアイデアが浮かんでくるわけですよ。彼らの発想と中心市街地などの商店街の人たちの発想は、もう根本から違う。
発展するための「制約をどけてくれ」と、生き残るための「助けてくれ」の違いです。

うむ。新しいアイデアは、イケイケ企業との話し合いを市長から率先してやると。擦り寄ってくるおじいちゃん企業は、つらいと。

トップにこそ求められるコミュニケーション能力

千葉市は恵まれているとは言え、既に財政規律では実績を出し、すぐに効果が出にくい都市経営に関しても期待が持てる良インタビュー記事でした。

感心したのは、コミュニケーション能力。
予算カットでは、軋轢があったと想定される組合との交渉で人件費削減を勝ち取る。高齢者福祉は、なあなあで聖域化する傾向があるが、無駄なところを見極めてカットしていく。ここも、福祉団体をはじめとした交渉があったと思う。

新たな事業・施策でも、外部人材を積極的に取込み、外部と市役所内部の人材のコミュニケーションを高めることを重視しているようだ。
新たなアイデア探索でも、今まで役所と話したことがないイケイケ企業に市サイドから会いに行って、新事業や施策アイデアを拾ってくる。

トップである市長が自らコミュニケーション能力を発揮して行動していくことが大切だと、改めて思う。

若さも、やっぱり いいね! と感じる。
これは、魑魅魍魎な古株タヌキとのしがらみを断ち切る潔さがあるという条件付きだけど。
その前提として、選挙力が必要な現実があるが、このインタビュー記事をはじめとして情報発信することで、その力がつくのなら、ネットやメディア活用も一層重要になるだろう。

あと、施策実施のタイミングの大切さ。
この記事で、なるほど、というか一番気付かされたのは、財政健全化が一定うまくいった理由についての彼の言葉。

我々がラッキーだったのは、消費税増税の前だったことです。増税後だったら瞬間的にしろ金が地方にも来ちゃうから、削る理由から説得力が失われかねなかった。
そうならなかったおかげで、考えられるところはほぼ切ることができました。

うーーむ。 確かにね。

って、逆に言うと、消費増税が実質決まった今以降、もう地方自治体の予算削減もしばらく絶望的?
最後になって、少し暗くなってしまったが、、。まあ地方自治の無駄削減は、進めないとなあ。