yahooメール広告の問題   原発みたいに、国と事業者がズブズブにはならないよね

Yahooが8月から始める予定のYahooメールでの広告配信が話題になっている。
規制官庁としての総務省が、「通信の秘密」の侵害に当たるかどうか調査する考えを明らかにしており、どうなるのかという業界問題。ただ、ユーザメリットとプライバシーというトレードオフが根本問題であり、結構重要な話題だ。

Yahooメールでの広告−インタレストマッチ広告とは、
http://info.mail.yahoo.co.jp/im_optout/

Yahoo! JAPANのサービスで表示される一部のインタレストマッチ広告において、お客様がYahoo!メールでご利用になったメールのタイトルおよび本文を機械的に解析し、その結果を利用することによって、お客様の関心と関連性の高い広告が表示されたやすくなります。

例えば、お客様が国内旅行に関する内容が含まれるメールを閲覧されている場合、国内旅行に関する広告が表示される可能性が高くなります。

Yahooメールを使っていて、「今度、福岡に遊びに行くよ」とメールすると、例えば福岡のホテルやお土産、飲み屋などの広告が出てくるというものだ。メールの中身を読んでいるのは、当然、人ではなくコンピュータである。

まあ、気持ち悪いと言えば、そのとおり。ただ、webメールのような無料サービスでは、そもそも無料というメリットがあるし、その広告を便利と思う人もいるかもしれない。ユーザメリットとプライバシー保護のトレードオフ問題だ。

Yahooだと話題になっているが、メールに関して言えばGmailなどを使っているユーザなら、すでに経験済みのものだ。
僕も数年前にGmailを使いだした時、メールに関連した広告が出てくるのは、ぎょっとしてプライバシーポリシーをチェックしたものだ。
今はどうかというと、Gmailを止めてもいないし(サブメールですが)、広告をクリックしたことも無いし、広告情報にメリットがあるわけではない。ただ、Googleなら無料は当たり前、という感覚ではあるが、無料でGmailを楽しんでいるのは事実。

Yahooが問題になっているのは、国内法である電気通信事業法で保護されている「通信の秘密」を侵害しているかどうかクローズアップされているため。
Googleが問題になっていないのは、 ”国内法の規制を受ける電気通信事業者として届け出をしていないからである。「メールサーバが国外にあると説明を受けた」(総務省関係者)と、国も容認のスタンスである。” のため。
  週刊ダイヤモンド 「新サービスでヤフーが開けた通信の秘密というパンドラの箱
  http://diamond.jp/articles/-/21403

同じタイプのサービスながら、Yahoo(Japan)は日本企業で問題、Googleは外国企業だから容認と。

メールに限らず、インターネット広告では、ユーザメリットとプライバシー保護のトレードオフ問題は多い。「行動ターゲティング広告」と呼ばれるもので、Yahooの「インタレストマッチ広告」も、この一種である。
行動ターゲティング広告は、ユーザが興味のあることを検索したり、特定サイトをサーフィンしたような ”行動” を蓄積、分析し、そのユーザにマッチした広告を配信する手法。米国では伸びているし、日本でも(期待ほどではないが)伸びつつある。

よくあるでしょ。一度訪れたサイトの広告が、全く関係ないblogとか見ている時も出てくるやつ。
この行動ターゲティング広告は、国の規制はない。というか、業界がガイドラインを設定し、行動情報の履歴といっても個人情報保護法に基づく個人情報と紐づけないことで個人を特定しないことを前提に、各種の業界自主規制を設定している。

インターネット広告推進協議会 「行動ターゲティング広告ガイドライン
http://www.jiaa.org/release/release_bta_100624.html

その中に、機微情報などのガイドラインもあるが、どの位遵守されているかは、少し疑問。「お禿」「ガン」とか関連の情報は、機微情報かどうか分かれるのだろうが、関連広告が出てくるケースがある。

まあ、今はインターネット広告が問題になっている程度だが(というと、T氏をはじめ怒られそうだが)、今後、「ネットワーク社会」が広がると一層深刻になる可能性がある。
例えば、今話題の「スマートグリッド」。家庭などの電力利用量をオンラインで測定し、省エネに繋げたりするサービスだ。今、実験段階ではあるものの、自宅内での人の動きなども測定し、一層の省エネレコメンドをする計画もある。

スマートグリッドのように「家」という個人情報に近い情報の流通は、ますます気持ち悪い。例えば、いかにも家に誰もいないような電力利用量データが漏れて空き巣に入られるのは以ての外だし、昼いて夜いない情報をもとに、夜のバイト情報とか流されるのもなんだかという感じ。

個人がサービスから受けるメリットとプライバシーをどうバランスさせるか、ということが問題になると、決まって、個人がOK(許諾)を出せば良いのでは、、という話になる。ただ、許諾といっても、その方法は、都度許諾ボタンをポチッと押すような積極的なものから、ポリシー最初に読ませてポチッとするとか、ポリシー出しておいて、反対しないならokと見做すとか、いろいろある。

この問題は正解がない。ネット広告やスマートグリッド事業者も、業界ガイドライン遵守が求められるし、ユーザ個人の許諾意志も求められる。今回の、Yahoo(Japan)メールのような国の制度や国際的なハーモナイゼーションの問題もある。つまり、国の規制制度の設計の話。
当たり前だが、ユーザ、事業者、国がそれぞれで役割を果たすこと、、

Yahooメールで言うと、日本企業は国内法でダメ、Googleは外国企業なので日本内のビジネスでもokというのは、変更される可能性がある。これは、新たなテクノロジーによる新たなサービスということで、法的にシロとして一定のルールのもとYahooもGoogleもokになる方向。

当然、昔のテクノロジーの環境の中で出来た電気事業法の惰性が続き、国内企業であれば役所の権力で封じ込められて、今までどおりということもあり得る。Yahooはダメ(クロ)、Googleはうやむやで結果今までどおりok。Yahooが、いちゃもんをつけてもだ。

先のダイヤモンドオンラインは、こんな見方をしている。

ヤフーにしてみれば話がどちらに転んでもリスクは低い。総務省が“クロ”と判定したらライバルのグーグルを道連れにでき、“シロ”ならば大きな果実を得られるからだ。

いや、クロならば道連れじゃなく、今までどおりでしょう。Googleは続けるよ。
ただ、確かにYahooはリスクが低いかもしれない。Googleが良くてYahooはダメと国が判断したら、その見返りに他に何かを得るかもしれないからだ。まあ、原発で見られた国と事業者のズブズブが、web事業者でも始まることはないとは思うが、、、

ユーザとしては、このようなサービスとプライバシーのトレードオフに許諾の判断を自分でするとともに、どうにか事業者と国の動きをチェックすることが必要だろう。
MIAU(インターネットユーザー協会)とかも含めて。