釣って、釣られて、、SNS時代のマーケティング
昨日、久々の友人と飲んで旧交を温めた。その中で出たSNS時代のマーケティングよもやま話を少し。
80年代に学生を過ごしたオヤジ達が飲むと、最初は必ず、如何に自分はバカなことを考えているかという自慢話になる。それに飽きると、営業ネタにもなりそうなひそひそ話し。その後は、まあ、ビジネスにせよ生活にせよ、よもやま的なことを多少愚痴りながらという感じ。今回もそうだった。
彼は、広告業界のマーケティングをしている。顧客の広告代理店は、今は結構シビアだろうが、彼自体はどうにかなっていると飄々とした感じ。
広告業界は、リーマンショック後からひどく落ち込み、、、(そりゃ、そうだろ)、、、展望がない中、Twitter、FaceBookにみんなが群がっているとのこと。これは、唯一勢いがあるインターネット広告だけという話ではなく、テレビや新聞のオールド・メディアや、小売りのPOP、デジタルサイネージなど屋外広告、イベント展示などすべてがそうらしい。
なるほど、SNS時代のマーケティングのイケイケ空気ですか。
で、それは、SNSをしているマーケットリーダーをキュレーターとして、そこから新たな消費ニーズを把握し、アジサイ革命よろしく消費者を ”動員” する、、、とかカッコイイものではなく、ベタに広告をスマホ写真に撮ってもらって、拡散してもらうことに腐心しているらしい。
ふーん。そうなんですか。
「ほら、JRの車内広告で***(わからず、、)とかあるだろ。知らない? あの、もじゃもじゃ毛が出てる奴」、、あ、見たときある。
「あれなんかも、とにかく撮ってもらい、SNSで拡散して欲しい、ということよ」、、そうな訳かあ。で、広告効果あるの?
「まあ、拡散効果はわかるから、、やるのよ」
へえ。釣りをしている訳かあ。
で、先日書いたブログ記事ネタだが、日経新聞の最近の尖った(というか変な)記事見出しのつけ方は、ベタな想定購読者向けか、それとも釣りか、とかの話をする流れに。
”国家戦略会議の長期ビジョン報道をネタに、、 メディア報道にはご用心”
http://d.hatena.ne.jp/morissk/20120709/1341848912
もう彼は即座に、そりゃ釣りだとのお答え。
その理由は、オンラインの新聞記事を書く記者がアクセス数を増やしたいというインセンティブが強いかどうかはわからないが、今メディアで発信する立場では、必ずSNSの拡散を意識しているから、とのこと。
そう言い切られると、そうかなという気もした。マーケターとジャーナリストの違いとか置いておいて、、、
で、SNS時代のマーケティングは、面白いか聞いてみた。クリエイティブに金をかけないので、つまらないと、つまらなそうに言った。
確かに。つまらないことを聞いた僕が悪かった。
ただ、不景気のせいか、SNSのせいか、その釣りたい若者、若夫婦の世代のせいかわからないが、ここ20数年来、最も広告が変わるような雰囲気だそうなので、そこそこ面白味もあるらしい。
マスマーケティングは遠い過去の話で終わった、消費者をターゲティングしたセグメントマーケティングを重視、とか言っても、実際はターゲットに広告を重点投入すると他のセグメントもそこそこヒットするので結局はマスマーケティングでした、というのが続いてきた。だが、やっぱしここ1〜2年で変わってきているようだ。
昔から散々言われてきた双方向コミュニケーションというコンセプトがやっとSNSで形になって表れた時代だから、まあそうだろうねと同意した。始まって数年なのだから、今はSNSの拡散getに腐心することでしょうがないかもしれないと。
これも昔、彼とかと読んだ本で、大澤真幸さんの「不可能性の時代」がある。
戦後からのキラキラ輝くものが彼方に見える「理想の時代」。70年代以降の、そのキラキラが剥がれてきながらも、彼方に何かなくちゃ困ると考えた「虚構の時代」。それを経て、95年くらいから「不可能性の時代」が始まったという本だ。
『「現実から逃避」するのではなく、「現実へと逃避」する者たち。彼らはいったい何を求めているのか。』とamazonにもある。キラキラ輝くものが虚構としても彼方にあると考えられない/考えない不可能性の時代って、10数年前に読んだ当初はピンとこない点もあったが、今の結構な部分のSNSとか見ていると、その不可能性が形あるものに感じる時がある。
彼方の理想や虚構よりも、目の前にある「ちょっとイイネ!」の現実に釣られて、釣って。。
酒の席でのよもやま話で落ちもないのだが、スマホをちら見もしないでお話した数時間でした。
- 作者: 大澤真幸
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/04/22
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