消費税率引き上げ容認の人って、本当に社会保障の負担意識あるのかな?

昨日の「消費増税法案、衆院本会議で可決」にタイミング良く、消費者サイドのアンケート調査結果が出た。

消費税率の引き上げ、やむを得ないが50%弱
http://news.mynavi.jp/news/2012/06/27/096/

調査結果のソースはこちら
連合総合生活開発研究所(連合総研)  第23回「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート調査」
http://rengo-soken.or.jp/report_db/file/1340353807_a.pdf

調査項目自体は、以下のように幅広いが、タイミング的には、「4.社会保障に関する意識」の社会保障と消費税に関する意識調査が興味深い。
1.勤労者の生活と仕事に関する意識
2.最近の家計の経済状況
3.高齢期の就労に対する意識
4.社会保障に関する意識
5.大震災に対する行動
6.収入格差に関する意識と階層帰属意識

調査方法・概要は、以下のとおりで、性別や年齢別に分けるとサンプル数が少ないので統計的な信用性は低いが、まあ傾向分析は可能。
〇調査期間
 2012年4月1日〜4月6日
〇調査方法
 インターネットを使ったアンケート調査
〇調査対象
 首都圏および関西圏に居住する 20代から 50代までの民間企業に雇用されている者
〇回答者数
 計 1,874名

社会保障改革と消費税率引き上げの関係を考慮した場合、消費税率引き上げ容認派は50%弱と多い

同調査で、社会保障改革と消費税率引き上げの関係に関する考え方について、、
〇「社会保障が現状維持できる程度に消費税率を引き上げるべき」は34.2%
〇「社会保障が現状より充実できる程度に消費税率を引き上げるべき」は13.2%
で、この2つを合わせた社会保障が現状程度かそれ以上になることを条件とした「消費税率を引き上げるべき」の割合は47.4%と50%弱になる(下図)。

階層意識別(日本の社会を5段階の階層にわけた場合の帰属意識)に見た場合、、
「消費税率引き上げ反対」と答えた割合は、
〇「上・中の上」18.3%
〇「中の中」34.9%
〇「中の下」「下」がともに44.4%
で、階層意識が低くなるほど反対が多くなっている(下図)。


うむ。社会保障の維持・拡大を考えると消費税引き上げ容認派は約50%近くいると。
なるほど、「上・中の上」階層意識を持つ人(ぶっちゃけ、お金持さん&小金持ちさん)は消費税容認の比率が高く、階層意識が低くなる(ぶっちゃけ、お貧乏さん)ほど反対が多くなっているのは直感的にしっくりするかもしれない。

ただ、図の( )の実数に注目すると、「上・中の上」階層意識を持つ人は全体の10%弱で、「中の下」「下」の2階層で半数弱いる。このような階層意識の比率で、全体で50%弱も消費税率引き上げ容認派がいるのは、オヤッという感じがする。
図をよく見ると、消費税引き上げ容認派は、「中の下」で44%、「下」でも37%、ボリュームがある「中の中」ではなんと54%もいる。

生活が厳しいと感じる層でも社会保障のためなら消費税引き上げも容認する人は多いという調査結果。。。
野田さん、いいね! と。。。

年金・医療制度の給付と負担の意識は、消費税引き上げ容認意識と大違い!!

実は、この調査結果の面白いのは、別の質問の「年金・医療制度の給付と負担の関係」意識調査の方。
社会保障の肝である年金制度、医療制度のいずれについて給付水準を維持するための負担増に対して、どう考えるかという質問に対しては、、
1)年金制度
〇保険料引き上げもやむを得ない
 「そう思う」:24.5%  「そう思わない」:61.6%
〇税負担引き上げもやむを得ない
 「そう思う」:28.1%   「そう思わない」:58.3%

2)医療制度について
〇保険料引き上げもやむを得ない
「そう思う」:27.7%   「そう思わない」:58.8%
〇税負担引き上げもやむを得ない
「そう思う」:26.6%   「そう思わない」:59.4%

あらら、「そう思う」という負担増はやむを得ないという人は30%弱に下がっちゃった。消費税引き上げ容認は50%弱もいたのに。
なんだかなあ。

この30%弱と50%弱の違いをどう見るか?
まあ、テレビや新聞で「社会保障の維持のためには消費税あがるのいいことだ!!」キャンペーンが利いたのかもしれない。これを見たり読んだりして、マスメディア報道を素直に受け取る人が多くて、50%近くが消費税引き上げ容認派になったと。

実際は、今のデフレ、モノ余りの時代、消費税が8%、10%に上がるといっても、実際は小売りが増税分をカバーして、消費者には消費税増が回ってこないと考えている人が多いのかもしれない。
それは、消費税が10%になったら甘い考えだと思うけど、、、

まあ、実際の負担増に対する容認派は30%弱が実態に近いのではないかなあ。「上・中の上」階層と、「中の中」階層の半分くらいという感じ。
社会保障のためなら50%近くの人が消費税引き上げ容認というようなとこだけが流布されると、実態の意識とずれるのは確かと思う。やっぱ、野田さん、ダメ。