日中共同世論調査 日本人の中国に対する印象が傾向的に悪くなっている、その理由が気になる

中共世論調査 中国の印象、日本人8割「良くない」 共同調査過去最悪

http://www.asahi.com/international/update/0621/TKY201206200843.html
 ”日本のNPO法人「言論NPO」と中国で英字紙を発行する中国日報社は20日、日本人の8割超が中国に良くない印象を持っているとする日中の共同世論調査の結果を発表した。調査が始まった2005年以降で最悪の状態という。
調査は4〜5月に実施。日本で1千人、中国で1627人の回答を得た。
 相手国の印象については、日本人の84.3%が中国に「良くない」と答え、過去最悪だった昨年(78.3%)を上回った。理由では、資源・エネルギーの確保について「自己中心的に見える」(54.4%)が最多だった。一方、中国人は64.5%が日本の印象を「良くない」と答えた。”

朝日新聞が伝えるヘッドラインは、上記のように日本人の目線からピックアップ

Yahoo!ニュースは、レコードチャイナからの記事で、中国人の目線から
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120621-00000010-rcdc-cn

ソースは、こちら(認定NPO法人 言論NPO
http://www.genron-npo.net/world/genre/cat119/2012-a.html

 ここ2〜3年に、毒餃子尖閣諸島などが続き、日本人の中国イメージは悪くなってきたが、この調査時点(2012.4〜5)の1年間では、直接的な悪い事件がない中(まあ、エネルギー・資源問題とか、東京都知事尖閣諸島の土地買い取り発言とかニュースはありますが)で、一層悪いイメージになっているのは不安を覚える。

 ビジネス、プライベートとも20数年来の中国人の友人達がおり、政治も含め、いろいろ話してたまに喧嘩もする。今年は、少しはお互いとも相手国に対してイメージが良い方向になっているのではと話していた。身近な感じと、このデータのずれが気になるのでメモ。

気になるデータ

 ざっくりと言えば、日本人の中国人に対する印象は経年的に悪くなっており、理由は尖閣諸島、エネルギー・海洋展開、軍事増大などが挙がっているが、ナショナリズムに直結する尖閣諸島の領土問題が大きく、経済脅威や両国の関係に対する認識は悪くなっていない。
(こんな単純にまとめるのは危険だが)

以下、ごく簡単に

■調査概要・方法
言論IPOから
 ”日本側の世論調査は、日本全国の18歳以上の男女(高校生を除く)を対象に4月26日から5月14日、訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000である。
回答者の最終学歴は高校卒が44.3%、短大・高専卒が19.0%、大学卒が23.6%、大学院卒が1.3%だった。

 これに対して、中国側の世論調査は、北京、上海、成都瀋陽西安の5都市で18歳以上の男女を対象に、4月19日から5月2日の間で実施され、有効回収標本は1627、調査員による面接聴取法によって行われた。標本の抽出は、上記の5都市から多層式無作為抽出方法により行われている。"

 中国のマーケティング調査は本当に難しい。これだけの調査を経年でやるのは相当なご苦労だと思う。ただ、データ数値は参考として取り扱うのが良いだろう。
今回の調査対象者は、お互いの国に行ったり、友人がいるケースは限定で、大半がメディア(日本は主にテレビ、中国はテレビ、新聞、インターネット)からの情報や、今までの(ある種固定化された)イメージに基づく回答が主流とみてよいと思う。
うがった見方だと、各国のメディアがお互いの国をどう報じているか、各国の人のメディアリテラシーはどうか、という分析視点も可能かもしれない。


■日中両国民の相手国に対する印象
 日本人の「中国に対する印象」は大幅に悪化した昨年よりもさらに悪くなり、8割を超える日本人が中国に「良くない印象」。
中国人の「日本に対する印象」は昨年よりやや改善、それでも6割を超える中国人が日本に対してマイナスの印象。

 気になるのは、直接的な大きな日中間の悪い事件がなかった中で、日本人の中国人に対する印象が傾向的に悪くなっていること。中国人の日本人に対する印象がほぼ同じなのに比べてもこの傾向が特徴といえる。(これは真面目に考えてみないと)


■相手の印象の理由など、何点か
1)相手国に対する印象の理由
 ”日本人が中国に「良くない印象」を持つ最も多い理由は、「資源やエネルギーの確保で自己中心的に見えるから」の54.4%で、「尖閣諸島を巡り対立が続いているから」が48.4%で続いている。
 また、「軍事力の増強や不透明さが目に付くから」もこの4年間連続で増加し続けており、昨年の23.9%から、今年は34.8%に増えている。”

 去年に比べ印象が悪くなっているのは、尖閣問題が継続、エネルギーと軍事力の中国の突出が話題になったためと。

2)この1年間で両国関係に対する認識は変化したか
 ”日本人はこの1年間の日中関係に関する認識に、「特に変化はない」が昨年から5.1ポイント増加し50.8%と半数を超えている。「悪くなった」という日本人は昨年よりもわずかに少なくなったが、それでも39.8%(昨年は44.9%)と4割近くもあり、厳しい認識が増えている。”

 これは、大きな事件がなかったから素直な回答だと思う。日本人は、日中関係が悪くなっていないという認識で、中国に対する印象が悪くなったと。

3)日中間の懸念材料
 ”「日中関係の発展を阻害する主な問題は何か」という設問で日本人に最も多かったのは「領土問題」(尖閣諸島問題)の69.6%で突出している。
 この尖閣問題は中国漁船の日本の巡視船への衝突事件で一昨年、急浮上したが、今回は昨年の調査の63.2%をさらに上回っている。
 次いで、「海洋資源など巡る紛争」が34.1%(昨年は35.2%)、「中国の反日教育」が28.6%(昨年は30.9%)、「日中両国民に信頼関係がないこと」が27.6%(昨年は31.6%)と続いている。”

 尖閣、エネルギー・海洋資源、軍事などあるが、尖閣諸島という「領土問題」に、日本人は最大の懸念を持っていると。ナショナリズムに直結する問題が、海洋資源などの経済・セキュリティ問題よりも大きいと。

4)経済関連
 ”日中間の経済関係について、「日本にとって中国の経済発展はメリットであり、必要である」との見方を持つ日本人は43.4%(「どちらかといえば」を含む)と、昨年落ち込んだ41.9%から若干改善した。一方で「中国の経済発展は脅威である」との見方は昨年同様41.8%(「どちらかといえば」を含む)と4割台となり、メリットと脅威の2つの見方が拮抗する形になっている。”

 ”2050年の中国経済はどうなっているか
 日本人の「米国と並び影響力を競う」との見方は、昨年から減少に転じ、今回は32.4%(昨年34.6%)になった。逆に「中国経済は米国に並ぶのは難しい」との見方が32.6%(同28.5%)に増加し、初めて首位となるなど、慎重な見方が広がっている。”

 中国の経済力は凄いが、若干陰りが見えていると感じている。単純な中国経済の脅威が、中国の印象の悪さにはつながっていないという見方ができる。